大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)717号 判決

被告人 朴寅沢 外一名

〔抄 録〕

被告人尹在[吉吉]の弁護人の控訴趣意について。

刑法第二十一条の規定によるときは、未決勾留の日数は、その全部又は一部を本刑に算入することを得るわけではあるが、茲にいわゆる本刑とは、当該被告事件について為された宣告刑を指さしていうのであるから、これに通算し得る未決勾留の日数は本刑の科せられる罪について発せられた勾留状に基ずき拘禁された日数のことを言い、該宣告刑に関係のない全く別個の事件における未決勾留の日数は、これを算入し得ない筋合である。被告人が窃盗未遂被疑事件につき、昭和二十九年八月十三日逮捕され、勾留状の執行により同月十五日以降同年九月二日まで勾留されたことは記録上明らかであるが、右被疑事件は結局公訴の提起に至らずして終つた事件であつて、本件公訴にかかる被告事件とは全く別個の事実を内容とする事件に属し、これが被疑事件について為された未決勾留の日数は、前段説明するところに照らし、本件宣告刑に通算し得べきかぎりではない。

而して、前記示すところの刑法第二十一条所定の如く未決勾留の日数を本刑に算入すると否とは全く裁判官の自由な裁量に任されているとは言いながら、これが裁量権の行使に当つては裁判官の恣意を許さず、同条所定の趣旨とするところに従い合理的に判断すべきところではあるけれども、記録を精査するも、原審が、本件についての未決勾留の日数を敢て本刑に算入しなかつたことについても何等不当とすべき特段の事由を認め得るに由がない。果して然らば、原審が、未決勾留の日数を本刑に通算しなかつた点を捉えて原判決における量刑の不当を主張する論旨は採用するに由がないばかりでなく、本件犯罪の罪質、動機、及び、態様、原判示第一の窃盗の所為は、保釈中更に敢行した掏摸の犯行に属すること並びに被告人の年齢及び境遇等記録上認められる諸般の情状において、原審の科刑は洵に相当であり、被告人尹在[吉吉]が初犯者であり、被告人朴寅沢が累犯に該当する前科者であるに拘わらず、原審がその宣告刑を同じくしたのは、刑の権衡上公平を失するものありとして原判決を非難する所論もまた採用するに価しない。原審の量刑の不当を主張する論旨はすべてその理由がない。

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